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ここでしか書けない創刊秘話

音楽誌「音に生きる」創刊までの挫折・苦労・感動…悲喜こもごもの本音を編集長が語る!

のばしのばしのXデイ、ふたたび

【第27話】
発売は10月19日、大安(第1話参照)。
だが、9月の下旬を過ぎたころ、
長年の勘が叫んだ。
「ヤバイぞ」と。
そお〜っとそお〜っと営業担当だけを呼んで着席、
周囲の人払いをしてからゆっくりと言葉を選び、話し始めた。
「あのさぁ〜、発売日なんだけど」
「はい?」
この返事に「?」を微妙に入れてくるあたりは、
さすがに企画発案者。
つき合いも長いからネェ。
「ちょっとだけ送りたいんだけど」
一同「…」
「どのくらい引っ張れる?」
やはり「…」
しばしの沈黙を破り
「無理です。初めて取り引きするクライアントに恥ずかしいじゃないですか」
「そうだよねぇ、でもさあ〜」
一同「…」
ずっとこじ開けられない会話。

「うるせぇなぁ、できネェもんは、できネェんだよっ!」と、言える強い編集長ではない。
「あのさあ、編集も頑張っているんだからさ、協力しようよ」なんて明るく言うのも、
この時点で引っ張ろうとしている自分の立場を考えると無理。
続いていく、一同「…」
重い空気をこじ開けたのは、
営業最古参の男。
「なんとかしなくちゃならないんですよね、わかりました」
そしてここまで言ってくれた男に対してボクは
「じゃあ、Xデイ練り直すから。作業状況を確認してくるねっ」
と極めて軽く応え、
重く沈んだその場を立ち去ろうとした。
するとさすがに最古参、
「最低でも、最悪でも月内ですよ」
とのセリフを背中に投げつけてきた。
しかしこのとき、彼の大きな誤算はまさか月内ギリギリまでは甘えないだろうということだった。

“少しでも 保険かけたい 創刊号”

うた(?)のひとつをひねり出しながら手帳をのぞく。
10月30日、大安。
うーん、いいねぇ。
再度営業担当たちを召集して
「やっぱりめでたい創刊は大安でしょ。なんか10と30の組み合わせもきれいで」
って、まったく意味不明のセリフを吐いた。
「いやっ、月内とは言いましたけどギリギリじゃないですか」
「まあまあ、いい本つくっちゃうからさっ」
あきれ顔の営業担当たちに
「ひとまず、社内ではまだ黙っててよ、オレから話すから。絶対だぞ」と、
さんざん迷惑をかけているのにスゴんだのだった。

そう、この作戦。
実に深い深いものである(ホントか?)。
確かに間に合いそうもないが、
やってやれないことはないペースではギリギリで乗っかっている。
ではなぜ、営業に多大なる迷惑をかけてまでこの作戦を展開するのか?
我々の作業はギリギリのところでふんばる。
というか、ギリギリにならないとエンジンがかからないヤツがほとんどなのである。
ある偉大な作家も語っていた。
「締め切りはモノ創りの偉大な源泉である(※よいコはマネしちゃダメだぞ)」
と。
夏休みの宿題を計画的にできるヤツは編集職なんか選ばず、もっとおりこうさんな仕事を選ぶのかもしれない。
いや逆に、夏休みの宿題をため込んだときこそ発揮される、
爆発する力を信じてしまった者だけが編集職を選ぶのか?
まっ、んな分析はともかく常にひどい進行状況なのである。
そこで、ボクは新しいジャンルへの創刊に向けて
“締め切りに踏ん張る力”
を2度利用することにしたのである。
おおっ、ナント恐ろしい。
史上最悪の作戦である。
悪魔に魂を売ったと言われてもいい。
かあちゃんデベソと言われたっていい。
くわしく説明しよう。
19日という当初のターゲットに向けて編集一同がんばって仕上げたときに、
ボクはこのセリフを吐くのだ。
「うっそだよーん、まだ時間あるもんネェ」と。
おお、なんと恐ろしい!
下手すれば自分の身が危うい、
捨て身の作戦だ。
だが、そこまでしてもクォリティを上げたいのとやはり、
創刊の納品を絶対に遅らせないという保険をかけたかったのも事実だ。
創刊号にだけ許される作戦である。
なぜなら、発売した雑誌には次号の予告がうてる。
豊富な宣伝費をかけられる大出版社ならいざ知らず、
出版事業7年目の駆け出し弱小にはこれがもっとも大きな宣伝なのである。
すなわち言い換えると、
次号の発売日を予告するからには、
それを厳守しなければならないのだ。
だが、なんつったって創刊号。
発売日を期待している読者もいないのだから
裏切りにもならないで済む。
とはいえ、社全体、
とくに営業に迷惑をかけたことは間違いないのだが(ごめんなさい)。

もう2度とこの必殺技を使わないと神様に誓いながら
「フッフッフッ、オレも相当なワルだぜ」
と、ひとり余裕で呑むビールも悪くない(呑んでる場合か)。