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ここでしか書けない創刊秘話

音楽誌「音に生きる」創刊までの挫折・苦労・感動…悲喜こもごもの本音を編集長が語る!

取材ファイナル/大事件編

【第25話】
さすがに疲労困憊の小笠原。
ここで鼻先にエサをぶらさげてみた。
「寿司食おうよ、仙台に着いたら」
「まじっすか」
「おごるよ、たらふく食っていいから。(小声)かんぴょう巻きとか、カッパ巻きとか」
「ありがとうございます」
元気モリモリ、作戦成功!
まっ、こんだけしんどい道中だからね、
気持ちよくおごっちゃうよ。
宿に着くなり寿司屋へ直行。
うまいっ。
助手席のボクでさえこれだけうまいのだから、
地獄のドライバー小笠原にはその何倍もうまいことだろう。
顔が崩れっぱなしである。
しんどい取材だったけど頑張った、
しかもいい内容だった。
ラクにただこなしてしまったら、
こんなにうまさを感じないだろうことは、夕べの風呂と一緒。
お腹が膨れ、適度にアルコールが回ると疲れがドッと出てきたようで、
早々に切り上げて眠りについた。

翌朝、元気に取材現場に到着した我々。
大雨でコンディションは最悪ながらも、
少しでもいい写真を撮ろうとアレコレ考えながらカメラバックを開けた。
いつものポケットにあるはずの…、あれっ、メモリーカードのポーチが…、
あれっ、ない。
まだ騒がない。
落ち着け、昨日はあったんだ、
無くすはずがないじゃないか。
だが、車の中もくまなく探してみても、
やはりない。
まるで一昨日の胸騒ぎが暗示していたようである、
まさに虫の知らせ。

まず優先しなければならないのが、
この現場での取材である。
幸いにも仙台市内。
大きな電気屋が近所にあるそうなので、車を走らせ…、
たいのだが情けない、小笠原に運転してもらった。
助手席から小笠原に謝る。
本気で、誠心誠意謝った。
謝りながらどんどんと落ち込んでくる。
最悪だ、このバカカメラマン。
電気屋でカードを購入して、なんとか取材を済ませた。
落ち着いて機材をチェックしてみると、不幸中の幸い? 
成田氏を撮影したデータがサブのカメラの中に残っていたので『音に生きる』のページは作れる。
紛失したのは朝のバイク雑誌の取材データが入ったカードと、
予備のメモリーカードの計3枚だったのである。
そしてささやかであるがもうひとつ、
不幸中の幸いはバイク雑誌の方が締め切りが後だから、
再撮影という手段があるにはある。
「自腹でさ、1人で再撮行くわ。この本が終わったら」
「そうですかぁ。いいですよ、青森まで戻っても」
いいヤツである、泣きそうである。
こんなバカカメラマンにはもったいないお言葉である。
考えられるのは、午前中の取材現場に置いてきてしまったのだろうことで、
たしかに戻れば見つかるかもしれない。
だが甘えるわけにはいかない。
青森まで戻ってそこから東京に帰ると、この夜の予定がくずれるし、
もう最終締め切り日まで2週間を切っているのだから、
そのロスは命取りになりかねない。
まして、締め切り前なのにボクのミスで小笠原の体力も消耗させたくない。
だいいちヤツ自身、成田氏の原稿を一刻も早く書き上げなくてはならないのである。
再撮影を決意し、気を取り直して遅い昼飯でも食おうとファミレスに入った。
「電話してみましょうか? 公園の名前わかるから調べて」
おっ、その手があった、ナイス小笠原。
「管理事務所みたいなのがあったもんな」
「ええ、ありましたね」
ほっそ〜い、光が射してきた気がした。
電話に出た女性にお願いしてみる。
撮影した場所を伝えて、探し物の特徴を伝えた。
「わかりました、探してきますので30分位したら電話ください」
と言われ、ドキドキしながら時間どおりにダイヤル。
「ありましたよ。ただ雨でずいぶんと濡れていますけど」
親切なことに送ってくれることになった。
いやぁ、人の優しさがしみる。
たとえデータが壊れていても、
その優しさに触れられたことがなによりうれしい。
それに、あの状態で青森まで走ると言ってくれた小笠原の気持ちも。

こうして、『音に生きる』創刊号の最終取材は終わった。
なんだか壮絶な道中だったが、
ボクたちらしいといえばいいかな。

後日、公園から送られてきた包みには
「すぐに乾かしてみましたが、ずいぶんと長いこと雨にさらされていたのでどうでしょうか」
とのメッセージが添えられていた。
うれしいよね、ありがとうございました。
データ? 
なんと、無事だったのでした。