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ここでしか書けない創刊秘話

音楽誌「音に生きる」創刊までの挫折・苦労・感動…悲喜こもごもの本音を編集長が語る!

ダメじゃん、編集長!!

【第17話】
零細企業のバカ社長とバイク雑誌の編集長。
さらにいまだテイストが見えない音楽雑誌創刊作業も加わり、もう毎日が尋常でない忙しさである。
そんなクレイジーサマーも終盤の8月25日、今回表紙を飾ったHOME MADE 家族のインタビュー取材に同行した。
この日はカメラマンも依頼してあるから、ボクは必要ないとも言える。
それでもあえて、たまりまくった仕事をこなしたい気持ちをグッとこらえ現場へと出かけた。
編集長として業界に顔を売り、かつ、現場を仕切る。
そしてさらに重要なのが『現象』。
これまでずいぶんと調査を繰り返してきた。
レコードショップや本屋で若者の会話を盗み聞きしたり、ライブハウスに出かけたりと、匂いのするところに積極的に動いた。
とにかくたくさんの現象を飲み込んできたのだが、すべてはまだ点でしかない。
その点と点とが、ある日ピキピキピキッと音をたててつながっていき、こちらへどうぞと方向性が見える日がきっと来る。
第11話でも触れたが、神の降臨をも思わせるような『ピキピキピキッ』なのである。
そいつが起こるには1にも2にも現象をたくさんあさることで、きっとまだ足りないのだと自分に言い聞かせ、現場へと向かうのだった。
取材の現場はとくに効率よくたくさんの現象を飲み込めるのである。
音楽にかけてきた人生を本人から直接聞けるのだからね。

午後3時、予定の時刻を少し遅れて取材が始まった。
場所は東京にある彼らが所属するキューンレコードである。
まずは撮影ということであいさつもそこそこ、地下の駐車場へと向かった面々。
印南はここでもインタビュー&ライティング担当で、忍も同行。
カメラマンとHOME MADE 家族のメンバー3人+マネージャーの総勢8人でゾロゾロと移動。
まずはここで撮ろうと駐車場の赤いシャッターをバックにカメラマンの富井さんはバシバシ切る。
スゴイ勢いでカットを割っていき、テキパキ指示を出す。
彼は印南からの紹介で、2人はこれまでも何度か一緒に仕事しているとのこと。
展開の早い現場でボクは、仕切れず蚊帳の外。
というのも、バイク取材の現場では主役がほとんどの場合バイクである。
そこにライダー役に編集部員だったり、プロのライダーだったりするが、こう言っちゃ失礼だが分刻みで仕事をこなさなければならないほどの人気者はいない。
ましてやバイク単体での撮影となれば、マシンは黙って撮られるだけだから、カメラマンはベストショットに向けてあーでもないこーでもないと自分のペースで仕事する。
曇り空の合間の晴れ待ち(雲の割れ間から日が射し込む)をするほどである。
そんなペースがいつの間にかボクの体に染みついていたのだ。

富井さんは次から次へと切りまくったすえ、気を使ったのか「指示ください」とくる。
うっ、出せない。
「3人を…、まあうまく収めて…、ええっと目力が、あの〜、ほしいかなぁ。な〜んてね、ハッハッハ」
ボクの信用はガラガラと音を立ててくずれていく。
うっ、マズイ、ボクなりの経験値でなんか言わなきゃ。
ナメられっぱなしじゃ男が廃る、なんてったって編集長なのである。
ガンバレ、自分。
「背景変えません?」
「そうですね、じゃあ外でロケしましょう」と、スタジオ代わりにしていたレコード会社からブラブラと外へ歩き出した。
すると街を背景に次々とカットを重ねる。
「あのトンネルの中おもしろそうですよね」と富井さん。
「は、はいっ」
うっ、また素人丸出し。
「トンネルの中がおもしろいわけねぇだろっ」と言いたいところをグッと抑え行くとパッパと2分ほどの作業。
「は〜い、次行きましょう」となる。
とにかく早い。
そのまま今度は近くの神社でこれまた撮る撮る、まさに次から次へと。
レンガの壁を見つけるとまた撮る撮る。
ロケは予定どおりの約20分で終了し、正直、この時点であがりに期待はしていなかった。
「ふーんだ、あんなバッバッと撮っちゃってさ。執念とか情熱がないな、やっぱバイク業界の方が上だよ」と負け惜しみ気味にひとりごと。
が、後日届いたデータを開くと、ビックリ。
お見事である。
いかにも音楽雑誌らしくフレームに収まっているじゃないか。
編集部員に見せながら「パッパッ撮っちゃうんでよ、すげえ早いんだよ。それでこの上がりはすごくネェ?」
巻頭インタビュー記事内にあるライブ以外の写真はこの取材で撮ったものなので、ぜひそんな現場のことを思い浮かべながら見てください。

そしていよいよ始まったインタビューである。
時間は5時までの約束で、相手が3人ということを考えるとけっこうタイト。
ズンズン進んでいくものの、やはりまとまりきらないうちに予定時間が迫ってきた。
ここでKUROが「今日はトコトンやりましょうか」と、時間延長を自ら申し出てくれた。
翌日に大切な野音(日比谷公園音楽堂)でのライブ(レポートご参照)をひかえているのにも関わらずだ。
ありがとう、その一生懸命はうれしいよ。
「多くのアーティストを目指す人が、ある境目でプロとそうでない人と別れる。それって何に原因があるのでしょうか?」
ボクも一応このラインを突破した人間(おっと偉そうに。アーティストはこの先がもっと大変なことは承知の上でね)だから、おおよその答えはわかっている。
ただ、この本ではそこをいろんな人の言葉で伝えていきたいから、あえてこの質問を投げかけた。

しばらく間を空けてKUROが口を開いた。
「自分を知ることですね」とのセリフから始まり、熱い気持ちを言葉にして紡いでいった。

詳しくは本誌にて。
このセリフはそのまま誌面でのタイトルにも使わせてもらった、ありきたりの言葉かも知れないが、その現場にいたボクには重く響き渡ったのだった。
結局彼らはメシも食わずに実に4時間に渡るインタビューに答えてくれた。
取材が終了したときは7時を回っていた。