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ここでしか書けない創刊秘話

音楽誌「音に生きる」創刊までの挫折・苦労・感動…悲喜こもごもの本音を編集長が語る!

うそっぱちな自分たち

【第8話】
突然の大トラブル発生。
バイク雑誌を生業にしている会社にとって、
メーカーへの出入り禁止処分は死活問題である。
とにかく敏速に誠意ある行動を取り、それだけはなんとか避けたい。
おそらく相当の時間とエネルギーを使うことになるだろう。
副編集長にTelを入れた。
「ちょっと大変なことが起こっちまって、しばらく迷惑かけると思う」と。
ボクを信じてコンビを組んでくれた印南に、本当に申し訳ない。
進行が遅れることもあるが、こんなしょうもない事件を起こす、
そんな程度の出版社に付き合わせたのかと…。

今回、なぜメーカーをここまで怒らせてしまったのか?
ある車両のテスト記事。
それは外部のライターの執筆によるものだが、
キチンと正常のバイク(この車両は事件発覚後メーカーによる入念なテストが行われた)に
「壊れているのではないか」という表現を使った。
これどう思います?
表現とは基本的に自由なんじゃないの、
と思われる方もいるかもしれませんね。
ぜ〜んぜ〜ん、違うのっ!
これは誹謗中傷記事なんです。
とてもまともな情報とはいえない。
もし本当に壊れていると思ったのなら、事実として多角的に検証して、
貸し出したメーカーにも抗議した上で、責任を持って発信するべきだった。
外部のライターがチョロっと乗った印象だけで、製造業において究極の言葉である
『壊れている』を使ったということに問題がある。
これは表現にもなっていない、身勝手で稚拙な言葉なのだ。
メーカーの企画や開発、最終的に組み上げている工場の方々、取り扱っている販売店のオヤジさんetc…。
製品というのは本当に多くの人間の努力が結晶となって生まれていく。
そうして関わった方全員へ向けた、言葉の暴力をふるってしまったのである。
活字は大きな力を持っている。
だから頑張る、日々努力を重ねる、プロとして、責任を持って。
そう、出版とはそんな責任の集合体なのである。
『書く』ならその背後にある事実関係をしっかりと見極め、すべての責任を持って書く。
それらの最終的な責任を負うための存在が編集長でもあるのだ。
ボクがずっと悩んでいる雑誌自体が持つテイストや方向性を決めることや、
マーケティングといったクリエイティブなことはものすごく重要な仕事である。
だが、乱暴な言い方をすれば、そんな能力なんざ無くても立派に務まる。
本当の責任感さえあればだ。

事実、この本の編集長は辞任を、副編集長は減給をそれぞれ申し出てきた。
だが出版の責任というのはそんなもので償えるほど軽々しいものではない。
ボクが2人に言ったのは「この反省を活かして、責任ある出版活動に誠意をみせなさい」だった。
「長」だけではない。
編集員たちにも大きな責任がある。
この外部のライターの原稿を何人もの人間が校正(表現を整えたり、間違いを見つけたりといった作業)している。
それらの人間がこの信じがたい原稿をOKとしているのだ。

バイク雑誌の編集長を初めて引き受けたのはもう8年以上前。
その後、出版社の経営を始め、もう6年以上が経過した。
双方の経験から貫いていかなければならない信念を、
ボクはこれまで一生懸命に社の仲間たちに伝えてきた…、が、そのつもりだったというしかない。
なぜもっと声を大にして伝えてこなかったのだろうと、自分自身がとにかく腹立たしかった。
とどのつまり、すべてはボクの責任である。
この時点の結果として、うちのレベルはそんなものだったということ。
情けなく、悔しい。
泣いて、泣いて、泣いて、泣いた。
出版社として深く謝罪するとともに、モノ創りの精神を一から見直すことを、
このメーカーの方々に伝えてまわった。
それはそれは、予想していた以上の膨大な時間と、精神的なエネルギーを注いだのである。
『音に生きる』創刊へ向けての大切な時間が、垂れ流しのように消費されていく。
一通りの謝罪を終え、全社員を集めて叱責と自身の反省を心を込めて伝えた。
今度こそ、社の一人一人に伝わったのかな?
それは、今後の出版活動にあらわれるはずである。